鍛えた人体は美しいものです。
そんな人体が、遥か届かないような高い場所に浮かんでいるのは非現実的でとても素敵です。
そんなことは、わかっています。
しかし私は敢えて、天井の低い場所を選んでいる…その理由を更に詳しくお話しましょう。
天井の低い建物ばかりの日本では、そもそもシルクとは相性が悪いのです。
私の身長は155センチ。
日本人女性の平均よりは小柄な身体をしているので、天井高が控え目な場所でも演れるには演れるのですが、メリットも沢山あるのです。
今回は、いつもの「間近で観られたほうが細部まで見えるから良いんだよ!」といった主張以外で解説を致します。
目次
- いつでも何処でも、の大切さ
- 現場に媚びない「機動力」が活きる
- 伝家の宝刀「Aフレーム」
いつでも何処でも、の大切さ
早速ですが、訊きたいのです。
天井は高いけれど、数少ない場所までわざわざ足を運ぶでしょうか。
余程の情熱が無ければ、気力が沸かないのが自然だと思います。
それより、ふらっと立ち寄った先にあったほうが、驚きも相まってワクワクしませんか。
何処でも観られるほうが気軽で、却って何度も観ていた…なんてことになるのではないでしょうか。
そして、もうひとつ。
色んな場所で観られる=あらゆるシチュエーションに合わせられる
これを私は大事にしたいのです。
「この場にエアリアリストを呼んだほうが楽しくなるけど、天井のことまで考えるのはちょっとなぁ…」という、私を呼んで頂ける主催者側の問題が解消されます。
こうして主催者側にしても、お客さんにしても、敷居が高すぎるよりは皆幸せな結果になると思っています。
それによって、「まさかこんな場所で観られるとは思わなかった」や「この人とコラボするなんて」といった、意外な面白さが生まれるのです。
演奏でも演劇でも他ジャンルのパフォーマンスでも、何だって大歓迎。
エアリアルシルクは意外と化学反応を起こすのが得意なのです。
現場に媚びない「機動力」が活きる
シルクというジャンルに於いて、条件の良い場所は限られています。
つまり、「その限られた場所で演りたい」と思う人が必然的に増えるわけなのです。
ショーのレベルは全員が高くて当たり前なこの世界。
そのなかで、どうしても「いかにあらゆる要素で(お客さんはもちろん、主催者等に)気に入られるか」という問題が絡んできます。
致し方ない、大人同士の争いですね。
しかし、私は煩わしいこと…例えば、人に取り入ったり暗黙のルールに縛られたりする事がとても苦手なのです。
私は自由であることを大切にしています。
これは持論になりますが、パフォーマーは不自由であってはいけないのです。
なので、場所や状況を選ばずに出来る今の手段を取りました。
人によっては、海外に拠点を移すという方法を取っていることもあるようです。
建物の天井が低いのは、どうしても日本での特質となります(耐震性など事情があるのでしょうか…)。
しかし、それで観る側の日本人は、エアリアルシルクの素晴らしさを知らないままで良いのでしょうか?
そんな勝手な使命感を持ちました。
伝家の宝刀「Aフレーム」
天井高にまつわる事情についてお話したところで、あとひとつ問題が残されています。
それは吊り点(人を吊る為の設備)に関すること。
命に関わる部分ですもの、一番重要なところですね。
エアリアルパフォーマンスを行うにあたり、耐荷重は最低でも500kgくらい必要です。
※勿論、技にもよるのですが…ドロップ技(高速で落下して地面に身体が触れる前に止まる、みんな大好きな派手技)を取り入れるのならば更に耐荷重が必要かも知れません。
しかし、天井が低ければそもそも出来ない技なので、今回は割愛します。
しかし当たり前といえば当たり前なのですが……
天井の梁の強度すらどの程度かわからない建物が多い中、そう都合よく条件を満たした吊り点なんかあるわけがないのです。
(最近は吊り点つきの酒場なども増えているようではあります)
そこで、私がいつも連れている便利アイテム「A‐frame(エーフレーム)」の出番です。
A-frameとは、エアリアル用の自立型スタンドです。
このサイトの「コンセプト」のページでも触れていますね。
総重量が30kgと持ち運ぶにはかなり重い為、郵送や台車が必要にはなります。
しかし、本来なら天井の工事が必要な吊り点が何処でも使えるので、かなり助かっております。
「設備が無ければできないパフォーマンスを選ぶのは、出演範囲も頻度も限られてしまう」
…そんなことを言われていた時代もあったな、と少し懐かしくなりました。
組み立て式なのですが、構造はとても単純。
穴を!ピンで!留めるだけ!!なのです。
よって、2人がかりで15分もあれば完成します。
先進的であるほど同時にシンプルである…これは真理です。
更に、高さも2.5mから3.4mまで可変式。
高さを出せば広さも必要にはなりますが、そこはご愛嬌。
形状の都合上、安定感のためです。
仕方ありませんね。
ともあれ、またひとつ「縛り」を解除することが出来たわけです。
最後に
さて結論、何が言いたいのかというと、
「身軽」
ということに重きを置きたいのです。
シルクに限らず、エアリアルでよく聞くのが「設備や環境が無いから簡単には出来ない」といったもの。
何かと大掛かりに思われがちですが、私はその常識を変えたいと思っています。
愛するジャンルであるからこそ、思うがままに演りたいのです。
居場所がなければ作れば良いじゃない。
それでは。